返済不要の奨学金は世代間格差を拡大させる

民主党が選挙公約の柱として、返済不要の給付型奨学金をマニュフェストに盛り込むことにしたようです。これについては、失われた世代としてはどうにも納得がいきません。

昔は就職氷河期で今ほど仕事もないなか、非正規に落ちても苦労しながら奨学金を返還していたものです。自分もそうでしたし、周りもみんなそうやって苦労しながら返還していました。今さら返済不要にするというのでは世代間の不平等につながりますので、世代間格差を是正するのではなく、かえって格差を拡大する結果になるものと思います。

そもそも今はアベノミクスで就職率がよいわけですから、卒業後は就職先も見つかるはずですので、返済に困るということはないはずです。返還不要にするべきなのは、失われた世代で未だに返還に苦しんでいる30代後半から40代の世代であって、就職率が改善している今の現役世代ではありません。

当時は非正規は自己責任といわれながらも、苦労して返還していたものでした。幸い、私は事業が当たって一括で返還することができましたが、もしそれがなかったとしたら、今でも何百万もの残債を抱えながら生活していたものと思います。今では富裕層へと入ることができた私でも、奨学金で何百万円もの債務を抱えている人を自己責任というのはあまりに酷なことではないかという気がしています。

また、奨学金の行方を考えてみると、最終的にお金が行き着く先は大学などの教育機関であり、そこで働く職員や関連団体に回っていくことになるはずです。学生が奨学金で何百万円ものお金を借りて、それがどこに回るのかといえば、それは教育機関です。

国公立大学であればそれほど問題はありませんが、私立大学などは大学経営をビジネスとしてやっているわけですので、返還不要の奨学金をとうして特定の業界へ税金が投入されることになります。もし、その私立大学の職員などで文部科学省の官僚OBによる天下りがいるとすれば、奨学金という名前のお金が官僚へも税金で流れていくことになるわけです。

ネットで「大学 天下り」などと検索すればいろいろ出てきますが、全国の私立大学の合計で、年収1千万円以上の文部科学省の官僚OBが500人以上天下っているという調査もあります。もし、返済不要の奨学金が創設されたとしたら、税金から奨学金として学生にお金が流れ、最終的にそのお金は大学をビジネスにしている私立大学や官僚に流れることになります。

将来ある学生のため、世代間の格差是正のためなどときれいごとをいっていたとしても、天下り官僚がいる時点で何の説得力もありません。もし、返済不要の奨学金を創設するのなら、最低限、私立大学へはNGにして国公立大学のみに限定すべきです。

個人的な考えでは、奨学金を返済不要にするよりも、学費を大幅に値下げする方向へもっていった方がよいと思いますが、仮に大学側へ補助金などの名目で助成したとしても、学費を値下げするような使い方にはならず、校舎の建て増しなどに使われるというから困ったものです。

いずれにしても、返還不要の奨学金というのは世代間の不平等、特に今も返還を続けている就職氷河期世代と現役世代との間で格差を拡大してしまいますし、最終的に利益を得るのは大学ビジネスの経営者であり、天下り官僚であるという点からみても断固反対です。

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