タブレット端末への電子署名の危険性

タブレット端末にて契約書が表示され、そこに電子ペンで電子署名(サイン)することによる商取引については重大な危険性があると感じております。実は先日、某携帯会社の販売店にてそのような事例があり、トラブルになってしまったため、その詳細をご紹介させて頂きたいと思います。

その時は窓口での契約だったのですが、店舗側でペーパーレス化を推進しているとのことで、契約内容をタブレット端末にて表示されて説明を受けていました。そして、了承して頂ける場合はこちらへサインしてくださいと言われ、署名専用の別のタブレット端末へサインすることを求められたのです。

契約書と署名が別々になっていたのですが、一般的な紙での契約書の場合、サインと契約内容が別々になっているケースはまずありません。つまり、契約内容と署名がひも付されていないことになるのです。この時点でちょっとおかしいなとは思ったのですが、そういうものなのかということでとりあえずはサインをしてしまいました。

そしてサインをしたのち、契約書の控えとしてプリントアウトされたものを手渡されたのですが、袋にまとめて入れておくとのことで、その場で確認することがなかったのです。

けれども、家に帰ってから確認してみますと、窓口では説明を一切受けておらず、見てもいない契約書が一枚紛れ込んでおり、それがクレジットカード契約に関する申込書でした。また、その契約書の下の箇所に、別のタブレット端末で署名したサインが上書きされてプリントされていたのです。

つまり、その契約書の署名欄にはサインしてはいないものの、別の端末で署名したサインが抜き出されてその契約書に貼り付けられ、悪用されていたことになります。通常の紙の書類の場合、別の契約書のサインの箇所だけを切り取って上から糊で貼り付けたりする人はまずいませんが、電子データの場合はそれができてしまうわけなのです。

そこでその携帯会社へ抗議したのですが、あちこちへたらい回されたのち、最終的にはクレカの申込みは無効にしてもらい、クレヒスを削除してもらえる結果にはなりましたが、普通に考えれば、これは文書偽装にあたります。

販売店側では、タブレット端末で表示してきちんと説明したと言い張れば何の証拠もありませんし、見た目上はその契約書へ私が電子署名した形になっています。また、携帯会社だったため、安心してしまい、本人確認のための免許証のコピーも提出していたため、こちらが抗議しても平行線をたどることになりました。

実際、言った言わないという口論になったのですが、私の場合、たまたまその数週間前に個人信用情報の開示請求をしていましたし、何より会社経営者のため、契約するなら法人カードになるため、クレカの申込みなどするわけがありません。また、クレジットカード会社からもネット上の集客で依頼を受けていたため、業務上の規約の関係で気軽に申し込むこともないのです。

なので、個人信用情報の同意の欄があれば、見逃すことはありませんし、仮に説明を受けていたとしたら同意することがないことには絶対の自信があったため、もし携帯会社の方で照会履歴を取り消さないつもりならば、CICやJICCに直接訪問して詳細な事情を説明すると抗議したのです。

最終的に、お店側から信用情報機関に削除を要請するということになったので、それで良しとしましたが、普通に考えるとこれは文書偽造ですので詐欺罪にあたるはずです。もしかすると刑事告訴すべきだったのかもしれませんが、そこまでしても私には何のメリットもないため、照会履歴の削除をしてもらうことで折り合いをつけることにしました。

ただ、タブレット端末へ電子署名した筆跡はデータとして販売店側に残っているため、悪用しようと思えばいくらでもできてしまうと思います。店舗側で契約書を勝手に作成し、そこへサインを上から貼り付けてプリントアウトすればいいだけですから、様々な形で悪用されてしまう可能性があります。

「免許証のコピー」と「電子署名」さえあれば、どのような契約書でも偽造できてしまうため、タブレット端末などへの署名には重大な危険性が伴うと感じております。上場企業である携帯キャリアの販売店でもそのようなことをしていますので、できるだけ、署名やサインをするのは紙媒体だけにすることをおすすめします。

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